退蔵マネー 2017 6 11

2017年6月10日の日本経済新聞Web刊には、このような記事がありました。

預金残高、ついに1000兆円 回らぬ経済を象徴

 金融機関に預金が集まり続けている。
銀行や信用金庫などの預金残高は、2017年3月末時点で、
過去最高の1053兆円となった。
 日銀のマイナス金利政策で、金利は、ほぼゼロにもかかわらず、
中高年が虎の子の退職金や年金を預け続けている。
 かつて銀行にとって預金はパワーの源泉だった。
集めた預金を元手に、企業や、自宅を購入する個人に、
お金を貸すのが銀行のビジネスモデルだった。
 企業の借り入れ需要が旺盛だった1990年代ごろまで、
多くの銀行で預金は不足した。
「行員にノルマを課して預金を集めていた」(地方銀行の元幹部)
(引用、以上)
 しかし、今や、「預金を集めているわけではないのだが」(大手銀行幹部)、
金融機関に預金が集まり続けている現状となっています。
 こうした現状に、政府も日本銀行も金融機関も、
頭を抱えて、途方に暮れているでしょう。
 金融機関としては、
有望な貸出先がないので、
金融機関の金庫にひたすら預金が溜まっていくが、
預金口座を維持管理するにもコストがかかり困っているというところでしょう。
金融機関の本音は、口座管理料を徴収したいところでしょう。
 こうした現状に対して、経済評論家の一部は、
お金の使い道がないならば、それに対して劇的な解決方法を示しています。
それは、「預金税」や「貯金税」のことです。
 仮に預金残高の1000兆円に1%の「貯金税」を毎年課税すれば、
税収は、毎年、10兆円になります。
この税収を高齢者医療費に充当するという手法です。
 今のままでは、「活用されないまま積み上がる『死に金』」になるので、
「貯金税」を介して高齢者医療費として活用するという手法でしょう。
 地方においては、高齢者向けの医療サービスが不十分な地域があるので、
そういう発想が出てくるのだと思います。
 しかしながら、こうした手法は、選挙がない評論家だから主張できる話であり、
投票率の高い高齢者の票をあてにしている政治家には、無理な話でしょう。
 ただし、選挙権が18歳になって若者の投票率が上がってくると、
現実的な話になってくるかもしれません。
 それにしても、「預金残高、ついに1000兆円」とは、すごいことで、
普通ならば、これほどの現金があれば、インフレになります。
 世界を見渡せば、借金をしてでも消費をするという国が多いので、
猛烈なインフレになる可能性があります。
 しかし、日本では、預金残高として銀行の金庫に凍り付いたままなので、
これは、「凍り付いたマネー」、つまり凍結されたマネーのようなもので、
退蔵されて経済の現場から消えているようなものです。
 そうなると、動いているマネーは、いや「動けるマネー」は少ないものとなり、
結局、市場では、マネーが少ないというデフレ感が出てきます。
 つまり、現金の価値に先高観が出てきて、
お金を使うよりも貯めておいた方が、お得という感覚になります。
要するに、デフレの時代に、現金は王様となりますが、そういう感覚に近いでしょう。
 知人が、こんなことを言っているのを聞いたことがあります。
昔、ある国で、100万枚も発行された記念コインがあるが、
普通ならば発行枚数が多くて価値がないが、
ほとんどが溶解されて、市場には、ほとんど残っていない。
だから、現存しているコインは、非常に価値があるという話です。
 日本のマネーも、凍り付いてしまって、
銀行の金庫に収納されて市場に出てこないならば、
市場に存在していて動けるマネーは希少なものとなり、
その価値は先高感が出てくるでしょう。
 結局、1000兆円もあってもインフレになるどころか、
デフレになって、現金は王様となるのかもしれません。
 マネーの流通速度が極端に低下してしまうと、
つまり、マネーの循環速度が極端に低下してしまうと、
たとえ豊富過ぎるマネーがあっても、
インフレは起こらず、デフレになってしまうということでしょうか。


































































































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